「ぼくの子供、産んでよ」
 そう耳元で囁くエレイニオンに、スランドゥイルは顔をしかめる。
「………そんなの…できるわけ、ないだろう」
「きみのなかに、いっぱい出すからさ」
 そう言いながら突き上げられ、短い悲鳴を上げる。
 もう、一度中で出されているので、そこは露で溢れてぐちゃぐちゃと卑猥な音を立てている。
「スランドゥイル、ぼくの子を産んで」
 


 ぐったりとベッドに横たわるスランドゥイルは、ぼんやりと傍らの男を見つめていた。
 いつ見ても、感動するほどに美しい。艶やかな黒髪に、星の光が映る。
 彼は、王、だ。
 この地で、最も力のある、上級王。
 自分など、足元にも及ばないのだと、とりとめもなく考える。
 彼の子を産みたいと思う女性は、少なくないだろう。
 王の寵愛を願う者は、少なくないだろう。
 彼は美しく、賢明だ。
「目が覚めた?」
 振り返って、ニッと笑う。
「そろそろ孕んでもいいんじゃないかな」
 冗談なのか、本気なのか、スランドゥイルの腹を撫でる。スランドゥイルはため息をついた。
「…何故、子に、執着する?」
 身を屈めて唇にキスをし、エレイニオンはスランドゥイルの瞳を覗き込む。
「だって、きみとはずっと一緒にはいられないだろう。きみはこの地を去る。
ぼくはきみを引き止められない。
きみがぼくの子を産んでくれたら、ぼくはきみの子とずっと一緒にいられるもの」
「………何を…言っているのか、わからない」
「フィンゴルフィン王家の血を絶やすなと言われている」
「あなたの子を産んでくれる女性なら、いくらでもいるだろう」
 あなたは、それほどに魅力的なのだから。
「わたしは、女ではない。子供は、産めない」
「頑張ってもだめかな」
「そういう問題では………」
 ふわり、と、覆いかぶさってきて、スランドゥイルはエレイニオンに抱きすくめられる。
「なら、ぼくは子などいらない」
「………エレイニオン…」
 なぜそんな、駄々っ子みたいな事を言うんだ。
「あなたは」
 髪に星の輝きを戴き、この地のエルフ達を統べる、王であらせられるのに。
「ギル=ガラド王………」
 その名を口にすると、エレイニオンは眉をひそめる。
「きみも、ぼくにそれを望むんだね」
 それは、哀しい言葉。思い。

 では、あなたは、自分の地位を捨て、名を捨て、使命を捨て、すべてを捨てて、
 このわたしを、選ぶことができるか?
 あなたが、
 全ての光から背を向け、わたしの手を引いて、荒野に向かうのなら
 わたしはきっと、
 あなたについていく

「エレイニオン」
 その白い背に、腕を回す。
「あなたの子は産めないけれど、あなたと繋がっていたい」
 エルフの命は永遠だけれど、
 こうして一緒にいる時間は、短い。
 唇を重ね、肌を重ね、
 深い思いを心の奥底に閉じ込めて、
 短い夜に繋がる。



「はぁぁぁ…」
 ため息をつくエレイニオンに、キアダンは顔をしかめる。
「昨夜はお楽しみだったようで」
「夜が永遠に明けなければいいのに」
「エレイニオン、しゃきっとしなさい」
 気付けのワインを差し出しながら、叱咤する。
それを一気に喉に流し込み、一度大きく深呼吸をすると、エレイニオンは背を伸ばし、顔を引き締めた。
「ギル=ガラド王、会議の時間です」
「わかりました」
 キアダンもギル=ガラド王に頭を下げる。

 燦然たる輝きの星。

 最後の上級王。




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いやもう、エレスラを書きたいだけだから。
本筋のストーリーから離れて、ただエレスラのえろが書きたいだけだから。